明日葉は八丈島では万能のスーパー薬草
体によいものは体が知っている
伊豆七島の人々は、もともとこの明日葉を薬草として珍重してきたわけではない。
身近に生える自然の野菜として、おひたしにしたり、テンプラにしたりして、日常の食生活にあたり前に取り入れてきた。
八丈島では、人間だけでなく牛の餌としても利用してきた。
それほど、普通の野菜であり、野草であった。
明日葉の効果に気がついたのも、こうして日常的に食べている島の人たちだった。
「酒を飲みすぎたあとで明日葉を食べると、二日酔いにならずにすむ」
「明日葉を食べていたら、血圧が正常になってしまった」
「明日葉を食べないと、とたんに便通が悪くなる」
といった声は、島ではもはや常識である。
「ガンにいい」
「成人病にもいい」
というのはまだしも、
「ハゲ頭から髪が生えてきた」「白髪が黒くなった」などというのもある。
とても、すべての真偽を確かめるわけにはいかないが、八丈島の人たちに聞けば、たいてい、10や20の「明日葉自慢」は持っている。
尾ヒレや背ビレがついて伝わっている話もあると思うが、たしかにスゴイということは、わかる。
やはり、これも毎日明日葉を食べているご利益なのだろうか。
生命力たくましい明日葉の魅力
伊豆大島の三原山が噴火する直前、火口直下の草原には、明日葉が群生していた。
大島は黒潮が流れる暖かい島という印象が強いせいか、雪など降らないと思っている人も多いと思うが、実際は、時々雪が降る。
三原山の頂上付近が白くなることもあるのだ。
火口直下は冬ともなれば氷点下になる。
そういうかなり厳しい自然環境の中で、明日葉が群生していた。
ツアー客がシャベルを片手に、明日葉を採取している姿をよく見かけたものだ。
しかし、ご存じの通り、大噴火。
一面、瓦榛と化してしまった。
噴火直後(といっても、半年くらい経ってだが)、かつて明日葉が群生していた場所は、流れだした溶岩に埋め尽くされていた。が、ちらほらと、緑が発生していた。
近くからは水蒸気が立ち昇っているというのに、もう、緑が出てくるなんて、生命の力強さには敬服するばかりであるが、よくよくその緑を見てみると、なんと、明日葉の若芽だったのである。
明日葉とよく似た「はまうど」なども、同じように芽を出していたが、溶岩の瓦榛を押し退けるように大地に顔を出していたのは、明日葉だった。
明日葉の研究で知られる、故・後藤博士は、「こういった火山の溶岩のところに生える明日葉にはゲルマニウムなどの貴重な元素が含まれていることが多い」と述べている。
地球の中心部から噴出してきたさまざまな貴重な成分が、まだ地中に濃く残っていて、それを明日葉が吸収するからかもしれない。
「根っこがどうなっているのかとおもって、土を掘り返してみたが、かなり深くまで根が張っていて、掘り起こすことができなかった」
と、噴火あとで明日葉を見つけた人は語っていた。
明日葉博士、人体実験をする
後藤博士は、明日葉にどのような成分が含まれているのかと考え、とくに噴火の溶岩の陰に生えているような明日葉を採取してきて、調べた。
その結果、意外なことが判明した。
ゲルマニウムが検出されたのである。
植物性有機ゲルマニウム。
人体にとても有効だといわれ、ガンをやっつけるインターフェロンの生成にも役立っている物質といわれている。
その成分が発見されたのである。
ちょうどそれを発見してしばらくのち、後藤博士は自身が肺ガンであることが判明した。
しかも、末期のもので、当時七五歳の博士にとっては、肺の摘出手術は「死」を覚悟しなければならなかった。
博士は「ちょうどいい」とばかりに、自分で発見したゲルマニウムがたっぷり含まれた明日葉を大量に食べ、手術のための体力づくりと、ガン細胞の増殖を防ぐ手だてとした。
さて、いよいよ、手術。
見事に、片肺は切除され、手術も成功。
しかも、明日葉のおかげで、体力の回復も早く、術後10年以上、元気に過ごされたのである。
明日葉の何が効いたのか
後藤博士の〈人体実験〉は、大成功をおさめた。
博士はとくにゲルマニウムを大量に含んだ明日葉を集中的に食したと報告しているが、ゲルマニウムだけが効果があったわけではないことは確か。
では、一体なにが、どのような成分が効果を現わしたのだろうか。
はっきりいって、単品としての成分ではない。
人間の健康は、単品のなにかを食べただけで病気がたちどころに治ったりするものではないからだ。
何度もいうように、やはりバランスという問題が一番大きいと思われる。
正直いって、明日葉に含まれているゲルマニウムはかなりのバラつきがある。
もともと、土中にゲルマニウムが含まれていなければ、いくら明日葉であったとしても、取り入れることができない。カリウムやリンといった元素にしてもしかりである。
ゲルマニウムは土地によってはまったくといっていいほど含まれていないこともある。
そのことをよく理解しておく必要がある。
では、なにが効果があったのか、という最初の質問に戻ってしまうが、ゲルマニウム以外にも、明日葉には多くの元素が含まれている。
繊維質もタップリだし、最近注目されているカロチンも含まれている。
こういった数多くの元素や栄養分が、スクラムを組んで複合的なパワーを発揮している、と考えたほうが理解しやすい。
余談になるが、数年前にビタミンブームがあった。そのとき、ビタミンを飲めばガンも治るし、肌もツヤツヤし、若返るともいわれたものだ。
多くの人々は、その言葉を信じてなんと、ビタミンの錠剤をガブガブ飲み始めたのである。
まあ、適切な量であれば、ビタミンにはいろいろな素晴らしい効果が期待できる。
しかし、人体に錠剤で飲まなければならないほどのビタミンが必要なのかというと、決してそんなことはないのである。
しかも、必要以上のビタミンはたいてい体外に排出されてしまう。
たくさん飲んでもムダなのだ。普通の健康的な食事をしていれば、必要なビタミンは補給できる。
そういう意味で、明日葉もそれだけ食していれば、OKということにはならない。
いろいろなものを食べて、その一品に明日葉を加えれば、栄養のバランスが保てる、ということなのだ。
後藤博士の肺ガンに効果があったのは、ゲルマニウムにもまして、明日葉のこのバランスのよさだったと思われる。
実際、「手術にたえられるだけの基礎体力を養い、術後には回復のための栄養を補給したのが明日葉だった」と後藤博士も語っておられる。